バオヴィン旧市街の紙扇子作りは、この地が南北を結ぶ交易で賑わう貿易港であったグエン(阮)朝時代に誕生しました。商人たちが行き交う活気の中で、紙扇子は暑さを和らげる道具としてだけでなく、フエの人々の暮らしに深く根付いた、この土地ならではの記念品・お土産としても親しまれるようになりました。
何百年もの歴史の変遷を経て、高貴な宮廷から庶民の市場に至るまで、紙扇子は祭礼、日常生活、そして伝統舞台芸術の場に常に存在してきました。今日、扇風機やエアコンの普及によって実用的な役割は一部変化したものの、この地の職人たちによって扇子作りは生きた文化遺産として大切に受け継がれています。かつてバオヴィンで名を馳せた木工美術や螺鈿細工などの数ある伝統工芸の中で、紙扇子作りは今なお存続している数少ない工芸のひとつであり、旧市街の真髄と古都のアイデンティティを守り続けています。


