秋季大祭(レ・トゥー・テー)は、ベトナムの農村、特にフエにおいて一年の中で最も重要な伝統儀式です。村人たちが天地、農業の神、村の守護神(城隍神)、そして開拓の先人たちに対し、風雨の順調と五穀豊穣への加護に感謝を捧げる機会です。秋季大祭の起源は稲作信仰にあり、儒教や先祖崇拝の影響を受けています。アントゥエン村におけるこの祭礼には、先祖への感謝、国家の安泰と民の平穏を祈願し、若い世代に「水を飲むときは水源に思いを馳せる(恩を忘れない)」という美徳を伝える深い精神的意義が込められています。
アントゥエン村の秋季大祭は、毎年旧暦7月中旬の旧暦7月15日、16日、17日の3日間にわたって執り行われます。旧暦7月17日は大祭の本祭(正祭)であり、祭礼の最も重要な儀式が行われます。村を離れて暮らす人々も帰郷して集い、心温まる団欒のひとときが広がります。
位牌の奉迎行列
本祭の日、正装を整えた村人たちは、ドンミエウ(チュオン潟の近く)にある村の祠からアントゥエンのディンへと開拓の祖の位牌をお迎えする奉迎の儀を執り行います。旗や伝統楽器の演奏、花、線香、酒などの供物を伴う厳かな行列が進み、神聖でありながらも賑やかな雰囲気が漂います。
写真:ドンミエウの村の祠から位牌をお迎えする様子祭壇の設営
行列の巡行路では、各集落の入り口に三門(牌坊)が建てられ、提灯や花が飾られ、香炉を設けた祭壇がしつらえられます。ディンの前には7つの家系の祭壇が厳かに設けられ、チュオン村コミュニティの団結と崇敬の心が示されます。
祭礼の儀式
旧暦7月16日の午後から、村人たちは参拝に訪れ、供物を捧げ始めます。長老たちが祭壇の前に立ち、行列が通過する際に礼拝の儀礼を行います。ディンでの儀式には、祝詞の奉読、献香、献酒、そして伝統的なちまき(バインチュン)、丸餅(バインザイ)、果物、三牲(牛、山羊、豚)などの供物の奉納が含まれます。
地域社会の結束
村の住民だけでなく、遠方で暮らす子孫たちも再会のために帰郷します。世代を超えて絆を深め、伝統を振り返り、文化的な価値を分かち合い、近隣同士の絆を強める大切な機会となっています。
秋季大祭は単なる宗教的儀式にとどまらず、コミュニティ性の高い文化活動でもあります。世代間の結びつき、人と先祖、そして自然との深いつながりを表現しています。神輿の巡行、祝詞の朗読、提灯や花の装飾といった儀礼の一つひとつが象徴的な意味を持ち、感謝の念と平和で豊かな暮らしへの願いを映し出しています。
さらに、秋季大祭はフエの文化を世界へ発信する絶好の機会でもあります。国内外からの観光客の参加により、この祭礼は無形文化遺産の保存に寄与するだけでなく、トゥアティエン・フエ省の文化観光の振興にも貢献しています。
写真:無形文化遺産の保護に貢献する祭礼